2019.05.31 02:18さかなの目 (さかなの目1) どろりと緑色に濁った水の中 片方の金魚が腹を上にしてゆらゆら揺れている。 死んでる?一瞬背中がザワっとしたが、よく見たら口がぱくりぱくり動いている。ああ……生きてた。水槽の隣に目をやると小さな籐のカゴ。千波が小学生の時父の日にプレゼントしたやつだ。──会社に行くときに必要なものを入れたらいいよ、ここだったら絶対忘れないでしょだけど、今はずっと空っぽだ。「お父さんの不在」が夢じゃないんだとまた確認させられる。元気に泳いでいる方は夜店で掬ってきた金魚の、たった一匹の生き残り。こっちの金魚は「一匹じゃ寂しそうだ」と言ってお父さんがペットショップで買ってきた。「知らないわよ、私は世話しないからね」祭りで掬って来た金魚を見せた時もお母さんは歓迎しなかったけれど...
2019.05.25 02:39嘘つきな爪(ネイル)さかなの目8 「修羅場」になんかならないといいんだけど……そう言ったのは律の母親の方だっただろうか。 隣のおばさんと母親はいつものように立ち話をしている。どうせ内容は相変わらず最近駅向うの住宅街で起きた通り魔事件か空き巣の話だろうと思ったら、今日は少し違うみたいだ。試験前で早く帰って来ているのに全然気づかなかったのは母親自身のくせに、「何?修羅場って」と律が聞くと、「立ち聞きなんかしない。子供には関係ないの」と追い払う。それでもいずれ話の中身は、誰からともなしに耳に入るのは解っている。ひと昔前のホームドラマなんかにありそうな古い住宅地。ちょっと暑苦しいご近所づきあい、余計なお世話ばかりやきたがる住人達のいるこの町の、愛すべきところでもあり、大嫌いなところでもある。...
2019.05.11 09:35ガラスの靴の魔法は解けない第50回 てきすとぽい杯 一時間半の時間制限&三題のお題「0時5分」「異国情緒」「忘れ物」時間も間に合わず、内容も中途半端でした。残念。 でも楽しく書かせて頂きました。また 長いお話のネタに使おうと思います。