ガラスの靴の魔法は解けない


第50回 てきすとぽい杯 一時間半の時間制限&三題のお題「0時5分」「異国情緒」「忘れ物」

時間も間に合わず、内容も中途半端でした。残念。 でも楽しく書かせて頂きました。

また 長いお話のネタに使おうと思います。


「忘れ物をしました。その靴は、これから私を幸せにつなげてくれるはず。」

 老女は同じ言葉を繰り返す。なるほど、片方の靴がない。 

とりあえず交番にでも連れて行こう、と私は思う。 時刻は0時5分。私だって家に帰りたい。 


「さっきまでどこにいたの?」

 場所は「お城」だと言う。異国情緒豊かな繁華街の店の中には「お城」と言ってもいい豪奢な造りのものも ないことはない。地味で粗末な服装の老女にとっては、どこもきらびやかな「お城」なのかもしれない。

 「何処から来たの?どうやって来たの?」 

面倒なことになったなと思うと 掛ける言葉もぞんざいになる。 

「ああ、もうあれは馬車でもないの。どこにあるのか解らない。だって……」 

少女みたいな喋り方をすると、彼女は私の腕を取り 時計を見て絶望的な声で言う。 

「12時を回ってしまった。魔法は解けたの」  

きっと、なり損ねたシンデレラ。無駄な希望を引きずって 今日まで生きて来たの? 

さっき私も「王子様」に振られたところ。誰かに貰う「未来の幸せ」なんて期待しない方がいい。

 さあ、ここでご家族呼んでもらって、元の生活に戻りなさいね。どんな日常でも 夢だけ見て暮らせればそれも幸せかもしれないね。

交番の入口で彼女の背中を押した。 


そんな都合よくガラスの靴の落とし物なんてあるわけない。だって魔法は解けたんだから。  

そう思いながらも 道路の向こう、一際古風な石造りの建物の大きな階段に きらりと輝く片方の靴を見たような気がして目を擦る。

ぺんぺん草 花束にして

オリジナル小説、随筆など。fc2「stand by me 」から引っ越しました。

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