2009.04.10 07:42つきのかけら 他 (TEXPO100字バトル)【つきのかけら】やり切れなさに、月を思いきり蹴り上げた。水溜りの中、月は微かに揺れ、元に戻る。跳ねた雫を被った馬鹿な自分を罵った。服についた雫がきらり光る。月の欠片だね。黙って後をついてきた彼女が言った。【昔住んだ部屋】新居探しの人囲み、曰く付きの部屋の話で盛り上がる。こんな日は、確かめに来てしまう。大切な思い出詰まった2DK。あのこのお通夜をした場所。見上げると、灯り点る窓、幸せな家族の気配がした【学生服の箱 開ける】くん、と嗅ぐ。真新しい布の香りだ。深い黒色、曇りのない金釦。誰の形でもない学生服。日々、たくさんのものをしみ染込ませ、3年を終えた時、いい思い出の品になりますようにと、母はただ祈っている