• Blog
  • その他のリンク

2020.05

2020.05.28 02:17
此岸の蜉蝣
──池の向こう側が彼岸──ひがん?──そう、「あの世」深く暗い森のような庭の隅にその池はあった。花の時期を外れた蓮池は、水面とそこから突き出す葉ばかりでひっそりとしている。彼女が指さした「彼岸」側の木々の隙間から見える空は、ほんの僅かの間に夕焼けの色を広げている。茜色に染まった世界は引き込まれるように美しかった。**「おさだかなこです。よろしくお願いします」黒板に几帳面そうな小さい字で「長田加奈子」と書くと、転校生はそれだけ言ってぺこりと頭を下げた。艶のある黒髪、白い肌。美人の転校生が来たと男子生徒が騒ぐのに反比例して女子の視線は厳しかった。サダコ、と女子の中で誰かが呟くと冷たい笑いが波状に広がった。^もともと病弱な彼女は療養のために曾祖母の住むこの田...

ぺんぺん草 花束にして

オリジナル小説、随筆など。fc2「stand by me 」から引っ越しました。

記事一覧

オリジナル小説

Powered byAmebaOwnd無料でホームページをつくろう