メロディさんの音楽教室

猫の大好きな心優しいお友達 melody♪さん

彼女にイメージを頂いて お話を書きました。

勝手に創作した部分もたくさんありますので ご了承下さいね。




メロディさんのおうちには、大きなピアノのある、すてきに日当たりのいい お部屋があります。

黒猫のななくんはいつも足をきれいにして爪もちゃんとといで、毛なんかも散らさないおりこう猫なので そのお部屋のいちばん日当たりのいいところで好きなように寝転んでお昼寝します。


今日もメロディさんは 素敵な春の曲を奏でています。

春の日には花の咲くような曲 夏の日には水の音のする曲 秋の日には葉っぱたちのささやきが似合う曲 冬は・・寒がりのななくんのためにほかほか心があったかくなる曲

メロディさんの弾くピアノは いつもななくんをふかふか幸せな眠りに連れて行ってくれるのでした。

でも ななくんはこの頃 メロディさんの奏でるピアノの音の中に 賑やかだった昔を懐かしんでいるような ちょっと寂しいつぶやきが聞こえてくる気がします。

一時 たくさん通ってきた音楽好きの子供たちももうすっかり大人になって 今ではご近所もお年寄りばっかりの住宅地になっていて 新しくピアノを教えてくださいとやってくる子どもがなかなか いないのです。

あの ちょっぴり乱暴だったり指が上手く動かなくってとたとたと、たよりなかったりするあの、子供らしい鍵盤の音・・

メロディさんはなによりもその音が大好きなのでした。(ななくんは どちらかといえばメロディさんが弾いているほうが、眠りやすくって 良かったのですがね。)


トントン カリリ・・

何の音かしら?


ある日のこと。ピアノの部屋の大きなガラス窓のところで音がします。

外を見ますと一匹のとらねこが座っておりました。

「あらあら、すてきなとらさんだこと。」

メロディさんが窓を開けて少しお相手をしますと とらねこは、すりすり甘えてきます。

とらねこはゆっくり遊んだ後、何か言いたそうな顔で振り向き、振り向き 帰って行きました。


コリコリ コツン・・

次の日はぶちねこがやってきました。

「あらあら今日はぶちねこさんだ。昨日のとらさんのお友達かしら?」

ぶちねこも窓のそばからはなれません。

「今日はピアノの生徒さんが来ているの。あまりお相手できないわ。」

メロディさんが言うと ちねこはその場に丸まって座り長いこと そこから離れませんでした。


ゴツゴツ ガリン・・

その次の日はさびねこです。窓のそばでゴロンとしてメロディさんを呼んでいます。

その日はメロディさんは長い曲をを弾いていましたので そのままにしておきますと 

曲のあいだ中、さびねこはそれはそれは気持ちよさそうにうっとりと寝そべっておりました。


「この頃 おきゃくさまの多いこと。」

メロディさんは 近頃のこのようすについて 嬉しいけれど少し不思議に思いながら ななくんの ふかふかの黒い毛をなでて言いました。

今日は ぽかぽか気持ちよい日差し。ななくんに寄り添ってお昼寝したい気分です。


コリンコ コツンコ トンカラリン

不思議で楽しい音がします。おや、と見ると小さなおきゃくさまが窓のところに立っています。

大きなシルクハットを被り、だぼだぼの黒い燕尾服、胸と袖のところから真っ白なシャツが覗いています。

おやおや おしゃれなおきゃくさまだこと。そしてメロディさんは そのおきゃくさまに長くてふさふさのしっぽがついているのに気がつきました。


「オホン、ここは メロディさんの音楽教室ですね。」

「ええ、ええ、そうですよ。 子どもから大人まで音楽のお好きな方ならどなたでも お教えいたします。」

「実は、昨日と一昨日、そうして一昨昨日、子どもがここにお邪魔したのですが なにしろ照れ屋なもので うまくお願いすることができませんでした。」

メロディさんは 昨日と一昨日と一昨昨日のことを思い出し なるほど、と思いました。

毎日やって来た猫さんたちは 音楽が習いたかったのね。

「そうですか、それでしたらどうぞいつでもおいで下さい。そうそう・・ちょうどいい楽器がたくさんあるわ。」

親猫の生真面目な物言いが可笑しくて、メロディさんはニコニコしてしまいます。

ななくんが子猫だったときお気に入りだった音のなるおもちゃ、私がこどもの頃遊んだおもちゃの楽器も、きっと物置のどこかに眠っているはず。


ななくんは ピアノの下に隠れて片目をそっと開け、様子を伺っています。(実は ななくん、おうちの中で育ったものだから、他の猫がちょっと苦手なんです。)

「それでは 私たち来てもよろしいのですね。ありがとう、ありがとう メロディさん。」

親猫はメロディさんの手を取ってぶんぶん振りました。あんまり振り回されるのでメロディさんが目をまん丸にしていると 今度はぎゅうぎゅう抱きしめてきました。

「やったー。ピアノ、ピアノ・・」

いつの間にやってきたのか、子猫たちもぴょんぴょん飛びついてきます。メロディさんがよろけて、ソファに倒れこんでもおかまいなし。ふかふかの猫たちがメロディさんの上に登ってぐるぐる喉を鳴らします。

「そんなに一度に乗ってきたら苦しいわ・・」


くすくすくすくす・・笑いながら 目が覚めました。

「あら、あら、あら、眠ってたのね。」

お腹の上に乗ってぐるぐる喉鳴らしてたのはななくんでした。

─メロディさんたら他の猫の夢なんか見ちゃってさ・・・。

ななくんは ちょっぴりやきもちです。


とんとん かりり・・

「あら、ななくん見て本当にまた、やって来てくれましたよ。」

今日は親猫に連れられた3匹の子猫です。親猫の毛並みを見てメロディさんは おやおや・・と思います。

だって 胸と足のところがふさふさ白い毛の黒猫さんだったんですから。


メロディさんのおうちには 小さなおもちゃのグランドピアノ ぽんぽん踏んだら音の出る、鍵盤の絵のついたシート ころんと転がしたら きれいな音のする大きなクッション その他いろいろなものがあるすてきに楽しいお部屋ができました。

メロディさんがピアノを弾くと、今日も猫たちがやって来て それぞれ気に入った楽器を鳴らして遊びます。ななくんはのら猫さんに少しずつ馴れて 上品な足の拭き方、毛を散らさない優雅な歩き方などマナーの先生を引き受けてくれています。


今日もメロディさんの音楽教室は大賑わい。でも、みんなが 一番大好きなのは・・(ほらほら、そっと覗いて見てください)メロディさんのピアノを聴きながら 一番暖かいところに寄り添ってうとうとお昼寝すること・・みたいですね。


ぺんぺん草 花束にして

オリジナル小説、随筆など。fc2「stand by me 」から引っ越しました。

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